第8章 甘いのを頂戴/徳川家康
「……凄い……きれい……」
蝋燭の灯りにぼんやりと照らされている桜の木は、幻想的な美しさの中で咲き誇っていて、それだけでも気分が上がってくる
それに目の前には政宗さんの得意料理が並んで、信長様のお気に入りのお酒もある。
が!!
私の目の前には秀吉さんたちが座っていて、嫌でも2人の熱々ぶりが目に入ってくる。
ちょっとでも風が吹けば
「寒くないか?」
と言いつつ自分の羽織を掛けてあげる。
姫君がお膳にある煮魚を食べようとすると
「骨が刺さったら大変だろ」
と言いつつ魚の骨を取り除いてあげる。
まったく微笑ましい光景に顔が引きつってしまいそう
そんな2人を見ていると私だって……と思ってしまうのは無理もないよね?
隣りに座って黙々と料理を口に運んでいる家康をじーっと見つめ、ため息を漏らしてしまった。
「……なに?」
「なんでもないよ」
「……そう」
ダメ、ダメ!
家康に求めちゃダメだよ
そんな事を考えていたせいなのかな?
きちんと摘まんだ里芋が畳に転がってしまった。
「……はぁ~」
盛大なため息をつく家康
絶対に叱られる!!
(お箸の使い方が普段から下手くそで家康によく注意されているのよ)
小言を覚悟して身構えていると
「……凛……あーん」
「へ?!」
小言の代わりに里芋が私の口に……
真顔な家康が早く食べるように促すから、とりあえず口に入れる。
「……美味しい?」
「うん」
「じゃあ次はこれ……」
「い、家康……むぐっ」
急にどうしたの?
聞きたくて口を開くと次々に食べ物が口に運ばれてくる。
いつもの家康らしくない