第8章 甘いのを頂戴/徳川家康
穏やかな春の陽射しの下、微笑み合い寄り添う2人。
「足元に小石があるから気を付けろよ」
「うん」
可愛いらしい姫君の足元には砂利粒くらいの小さな小石。それに気付き、手を握り転ばないようにエスコートする秀吉さん。
まったくもって羨ましい光景
秀吉さんは基本的に優しい
特に自分が寵愛する姫君には、これでもかっていうくらいに優しいし甘い!!
「いいな、羨ましいな、私もあれくらい甘やかせてもらいたい」
「……甘やかせてもらいたいの?」
「そりゃあ、そうでしょ? 好きな人に甘やかされているなんて幸せだと思うよ」
「……ふーん」
冷ややかな視線を私に送ってくるのは……
私の愛おしい人、家康。
秀吉さんとは真逆な家康
家康は私を甘やかした事なんて1度もない。
自分に厳しい家康だけど、その厳しさを私に押し付けたりはしていないと思うの
(たぶん……)
ただ、私がちゃんとしっかりするように叱咤激励してくれているんだよね
(あ……激励はない……かな?)
元から自分に対して甘い私だから、秀吉さんみたいに甘やかされたらダメ人間になってしまうのがわかっている。
だから、家康みたいにちょっとだけ厳しい人のがいいと思っているんだけどね。
「凛……そろそろ行くよ」
「ん? 行くって?」
「……やっぱり、忘れてたんだ」
呆れたように私を見つめる家康になんか用事でもあったっけ?と記憶を辿っていると
「あ!!……お花見?」
「そう……行くよ」
すっかり忘れてた
今日は信長様主催のお花見だったんだ。
「ほら……行くよ」
「ん……」
差し出された手を握りしめてお花見へと向かう。
(あれ?家康が手を握ってくれるなんて珍しいような気もするけど)
この時の私は気付いていなかったんだ
家康が何を考えていたかなんて