第4章 物の怪/明智光秀
「__わかりました」
まだ死にたくない
やりたい事を残して死ぬなんてイヤ
光秀さんに背中を向けて長襦袢の紐に手をかける
静かな部屋に衣擦れの音がやけに響いて妙な気分になりそう。
「うつ伏せになれ」
「……はい」
恥ずかしい
とにかく目をぎゅっと瞑って恥ずかしさに耐える。
「では始めるぞ」
「っ……はい」
ゆっくりと髪をかきあげられて耳とうなじが露出していく。
御神酒を浸した筆が耳たぶやうなじを滑って、むず痒さが身体全体を支配していくみたい
「ふっ……ンッ……」
声が洩れそうになりきつく唇を噛み締める。
囁くように念仏らしき言葉を唱える光秀さんの声に頭が惚けてしまいそうになる。
(なんだかとっても艶っぽく聞こえてしまうだもん)
いやらしい行為をしているわけじゃないのに、身体の奥が熱を持ってしまいそう
私を助かるために結界を張ってくれている光秀さんに悪いよ
しっかりとしないと
そう頭ではわかってるくせに
「ふっ……ぁ……」
背中から腰にかけて筆が滑るたびに身体が小さく跳ね上がってしまう。
愛撫されているわけじゃないのに……
感じてしまうなんて
どうしよう
変な気分になってきちゃう
「あ……」
時折、冷たい感触
「ん……」
まるで性感帯を刺激するように動き回る筆
「っ……」
柔らかな筆が焦らすように内ももに触れて
「ぁ……だめ……」
「もう少し足を開け……書きにくいぞ」
光秀さんの冷たい手が火照った私の足を押し広げる
それだけで電流が走ったみたいに身体が震えてしまう。