第26章 ホタル
光秀さんの手の中で淡い光りが点滅してる。
「これ……」
「蛍だな」
「ホタル……初めて見たかも……綺麗ですよね……っ!!」
初めて見たホタルが嬉しくてつい勢いよく顔をあげると光秀さんの顔が間近にあってトクンと胸が跳ね上がってしまう。
切れ長の細い目は、どことなく優し気に私を見てる?
私が勝手にそう想っているだけ?
光秀さんの事が好きだから……
あなたも私の事を好きだって思いたい願望がそう見えさせてしまうの?
「光秀さん……あの……」
「なんだ?」
「その……」
私の事どう思っていますか?
その言葉がなかなか出てこない。
心臓が破裂するんじゃないかっていうくらいにドキドキとするし、息もきちんと吸えない。
聞きたい、けど聞けない。
「どうした、凛」
「ぅ……」
頬を包みこんでくれる光秀さんの手が温かくて、胸が締め付けられてしまう。
触れてもらえる喜びに涙が流れて……
光秀さんへの想いが爆発してどうしていいのかわからなくなってきちゃう。
「ふっ……おまえは狡い女だな」
「?」
涙をぬぐってくれた指はそのまま唇に触れてくる。
「まるで蛍のようだ」
「ホタル……?」
「蛍はその光りで人の心を掴んでいく。触れたい衝動に駆られてしまう。
凛……おまえの笑顔も涙も蛍の光りのように俺の心を煽っていく」
「……光秀さん?」
「はっきりとした言葉が欲しい……そう顔に書いてあるようだが……」
「ンッ……」
それ以上、私は何も聞く事は出来なかった。
だって、甘いキスが唇を塞いでしまったから