第26章 ホタル
えっと……こっちが印がある。
こっちは……ない。
私は今、光秀さんの部屋にいる。
光秀さんの部屋で何をしているかというと、書簡の整理のお手伝い。
印がついている書簡とついていない書簡の分別をしていたのだ。
「光秀さん、終わりましたよ」
「思ったより早かったな」
「少しは役にたちましたか?」
「そうだな……秀吉のサル並みくらいには……な?」
「ひどいっ」
むくれて見せると光秀さんは、目を細めてあやすように私の頭を撫でる。
「褒めてるんだがな」
「もっと素直に褒めて下さいよ」
いつもそう
光秀さんは私を子供扱いするんだから。
私だって立派な大人なんだからね。
……光秀さんの中じゃ私は子供なのかな?
女として見てもらってないのかも知れない。
__やめよう。
考えだすと落ち込みそうになる。
光秀さんがどう思っていようとも、私は光秀さんの事が……
「凛」
「え?」
み、光秀さんの手がっ……
私の頬に触れてる??
触れてるよね?!
切れ長の目が私を見つめている……
それだけで胸が締め付られるように痛い。
「おまえは神経が通っていないのか?」
「え?!」
突然なにを言い出すの?
「見てみろ」
「ん?」
「おまえの頬についていたぞ」
手を包み込むように握りしめている光秀さんの手の隙間を覗き込んでみると……
「光ってる?」