第26章 ホタル
馬に乗せられて連れて来られたんだけど、何処なんだろう?
見えないからわからない。
目隠しをされている凛は耳を澄ますと川のせせらぎの音が聞こえてきた。
川に用事があるの?
「さ、ついたぞ」
「政宗?」
「ゆっくりと目を開けろよ」
「うん……」
政宗の言ったとおりにゆっくりと目を開けると
「すごい……きれい……」
どう表現していいのかわからないけど、幻想的な美しさっていう言葉がしっくりくると思う。
暗闇を照らす淡い光りが揺らめいている。
目の前を無数のホタルが飛び交っている。
まるで夢を見ているみたいと凛は思った。
現代にいたら一生観る事の出来ない光景に、ただ見惚れてしまっている。
「どうだ?綺麗だろ?」
「うん。とても綺麗……」
優しく凛の肩を引き寄せる政宗の周りにもホタルの淡い光り。
まるで政宗を包み込むように……
「政宗……綺麗……」
「お前もな……」
目を細めて笑う政宗の目の前にはホタルの光りを身に纏う凛の姿。
いつもの凛とはまた違う美しさをホタルの淡い光りが演出してくれている。
「ありがとう政宗」
「ん?」
「ホタル……生まれて初めて見た」
そっと政宗に抱き付く凛の背中に腕を回し、口付けを落とす政宗。
「ンッ……」
重なった唇の端から洩れる凛の甘い吐息に身体が熱くなっていくのを感じていく政宗は、ゆっくりと草むらに凛を押し倒してしまうのであった。