第25章 たまには構いたいの/豊臣秀吉
「確かにちょっと熱っぽいかもね」
濡れてしまった秀吉さんの顔を拭きながら、おでこを触ってみると手のひらに熱が伝わってくるもの。
「食事と薬は?」
「そういえばまだですね」
「まずはそっちが先だよ」
「では口の戒めだけはときましょうか」
縄を解く気はないんだね、三成くん。
「三成!!この縄も解け!!」
「駄目ですよ、秀吉様」
口の戒めを解いてもらった秀吉さんは当然のように怒鳴るけどその直後に思いっきり咳き込んでいた。
声もいつもより掠れて聞こえるし、若干鼻声……かな?
よくよく見れば瞳も涙目だし
誰が見たって秀吉さんが風邪をこじらせているのは明白。
「縄を解いてしまったらおとなしく寝てはくれませんから」
「これくらいなんでもない。俺は忙しいんだ」
「ちゃんと治した方がいいと思いますよ」
「凛までおんなじことをいうのかよ」
「まずはお食事を……さあ、口を開けてください」
お椀を秀吉さんの口に運ぶまではよかったんだけど、三成くんったら何をどうやったらそうなるのよ!!
ぼたぼたと秀吉さんの顔や着物にまで食べ物をこぼしてるじゃない。
「三成、頼むからやめてくれ」
「おや? どうして口の中に入っていかないんでしょうか?」
「三成くん……秀吉さんの口の中に入るまでは食べ物を離しちゃ駄目だよ」
「あ!! なるほど。凛様は賢いですね」
……天使の笑顔で言われても流石に今の言葉は素直に頷けない……かな?