第24章 届かない声/明智光秀*光秀side*
「逃げる事はないだろう」
「やめて……」
凛を腕の中に閉じ込めているのが誰なのか、はっきりと自覚させたくて耳元で語りかける。
耳から直接、俺の声を認識しろ
俺の存在を心に、そして身体に刻みつけてくれ。
「光秀さん……わかってるでしょう?私は」
「御館様の気に入りだろう……その証拠に……」
「ふ……っ……」
「こんなにも跡が残っているな」
凛の鎖骨や胸に散らされた跡を辿っていく。
真新しいその跡は昨夜も御館様に愛された証拠。
指でなぞっていくだけでジリジリと胸が痛みを覚える。
これが嫉妬というものなんだな。
自分の中に芽生えた感情に苛立ちを隠す事が出来ないとは……なんとも情けない。
「お願い……離して」
「離す気はない。それはおまえもだろう?」
「私は……ンッ……」
「まだ弄ってもいないのに濡れているようだが?」
「そんな事ない……っ……」
抱きかかえたまま、茂みから指を滑らせていくと、ぬめりを帯びた液体が指に触れてくる。
俺に触れられることに悦びを感じているのか?
「すんなりと指が挿っていくが?」
「お願い……やめて……」
愛撫もしていないのに凛の中は俺を受け入れている。
「おまえは御館様以外の男を求めている__
そうだろう?凛」
「そんな事ない……私には信長様だけよ」
「いや、違うな。おまえはいつも怯えている。御館様にいつかは捨てられてしまうのをわかっているからだ。
身寄りのない女のおまえは御館様に捨てられたら生きてはいけまい」
「言わないで」
「御館様はおまえを愛してはいない。ただの気まぐれでおまえを抱いているだけだ」
だから俺を愛してくれ
言いたいが言えない。
凛も俺も御館様を裏切る事など出来ないのだから。
それでも、凛を想うことはやめられない。