第24章 届かない声/明智光秀*光秀side*
抱きしめたい___
その想いは強くなる。
1度でいいから凛の肌を直に感じたい。
それがいけない事だとわかってはいる。
わかっているのに、どうして俺は求めてしまうのだ?
求めてはいけない背徳感に魅入られたのだろうか?
それとも手に入れる事が出来ないからこそ、自らの手で可憐な花を手折るように凛を手折りたいのか?
傷付け、凛の心に俺が残るように。
それでも俺は凛を抱きたいと思う。
俺の勝手な想いを押し付けてしまうのがわかっていながら___
「うわぁー……生き返る」
湯殿から聞こえる凛の明るい声を始めて聞いた俺は、着物を脱ぎ去りながら
「歪んだ愛を押し付けてすまないな」
心で詫び、湯殿の扉を開け放った。
「え?」
案の定、凛は吃驚として俺を見詰めてきた。
身体が温まったのだろうな。
頬を桜色に染めているのが何とも言えずに色香を放っている。
「光秀……さん。どうして?」
「俺も雨に打たれて身体が冷えたからな」
これから起こる事を察知したのであろう凛は、俺から逃れるように後ろに下がっていく。
「どうした?」
「ゆっくり……温まって……ください」
震える声でそれだけ伝えると湯船から出ようとする。
俺はすかさず凛の手首を掴み、湯船へと戻した。
「まだ冷えているようだな。ゆっくりと浸かるといい」
「……離して……」