第23章 届かない声/明智光秀 *夢主side*
送ってくれると言ってくれたので素直にその言葉に甘える事にした。
光秀さんってもっと冷たい人かと思ったら案外そうでもなかったんだ。
雨が強く降って風もある。
私は全身ずぶ濡れでこれ以上濡れてもあまり変わらないのに、光秀さんは私に雨が当たらないように傘を差してくれている。
自分が濡れてしまうのに。
ふと、気付くと道が違う事に気付いた。
「光秀さん……道が違いますよ」
「ここからなら俺の御殿のが近い。身体を温めてから帰るといい。籠で送らせるから心配するな」
「ありがとうございます」
光秀さんの申し出が嬉しい。
正直、身体は冷え切っていたから。
「光秀さんって優しいんですね」
「優しい?この俺が?」
「はい」
「おまえという女は甘ちゃんだな」
「?言っている意味がわかりませんけど」
「この乱世で人を簡単に信用しない事だ」
「そうですか?」
光秀さんが何を言いたいのか、私にはわからなかった。
ただ、私は今私に優しくしてくれる光秀さんが本当の光秀さんだと信じていたから。