第19章 目覚めた時は傍にいろ/上杉謙信
凛を求めてフラフラと歩く謙信であったが、結局見付からずに自分の部屋へと戻ってきてしまった。
「謙信様……何処に行ってたんですか?」
「お前こそ俺に断りもなく起き出して」
「ごめんなさい。つい、この子の事が気になって」
凛の腕の中にはお腹の大きな白いネコ。喉を鳴らしながら気持ち良さそうに眠っていた。
「そろそろ御産が近いみたいで鳴いていたから気になってしまって」
「まったく……」
育児放棄をされた赤ちゃんネコを凛が見つけて、親代わりになって育てたネコ。
凛がわが子のように可愛いがっているのも謙信は知っていた。
「お前ときたら……俺とネコ……どちらが大切なんだ?」
「それはもちろん……この子ですよ」
愛おしげにネコの頭を撫でているが、口元は嬉しそうに微笑んでいる。
凛にはわかっていたのだ。
「ネコのが大事」
そう答えると謙信が面白くないような顔をして拗ねる事を
そんな拗ねる謙信が可愛くて、心にもない事を言ってしまう。
上目遣いに謙信をのぞき込むと案の定、謙信は拗ねたように眉を寄せていた。
「ふふっ……(拗ねる謙信様、可愛い)」
「何を笑っている?」
「笑っていませんよ」
「いや、笑った」
「笑ってないのに……好きですよ、謙信様」
子供のように拗ねる謙信に凛はそっと唇を重ねた。