第18章 鬼はどっち?/豊臣秀吉
「やめてー!!!」
身体が跳ね上がり、私はまだ薄暗い部屋で布団をかたく握りしめていた。
心臓が壊れてしまうんじゃないかと思うくらいドクドクと音をたてている。
心臓を落ち着かせようと浅い深呼吸を繰り返していた。
「……ゆめ?」
落ち着いて周りを見渡せば、薄暗い中にも見慣れた部屋が目に入ってくる。
「凛……どうした?」
「ごめん……起こしちゃった?」
「大丈夫か?」
「うん」
背中に温かいぬくもりを感じて、そのまま体重を預けると安心してくる。
「怖い夢を見ちゃった」
「どんな夢だ?」
私はさっきまで見ていた夢を話し終えると
「俺が凛を疑って鬼畜な事を……」
「夢の中の秀吉は私を信じてくれなかったよ」
「悪かったな」
詫びるかのように優しい口付けが私のおでこに落とされる。
「まあ、出会い方次第だな」
「ん?」
「現実には俺は凛が信長様を助ける所を見ていたからすぐに信用した……が、実際に見ていなかったら……」
「見てなかったら?」
「……夢の中の俺ほどじゃないにしても……すぐに凛を信用はしていないだろうな」
「……そうかもね」
秀吉の信長様への忠臣っぷりは、今の私なら理解できるもの。
この人は信長様を守るためには鬼にでもなれる人。
「凛」
「ん?」
「夜明けまでまだ間がある。もう少し、寝ろ」
「うん……」
秀吉に腕枕をされて、胸に顔を埋めていると、規則正しい心音が私に穏やかな眠りを運んでくれる。