第10章 練習試合
全力で走ったからか息が少し上がる。
うっすらと中から話し声が聞こえる。
『興味があってん、がどうなるか。』
その瞬間ドアを勢いよく開けた。
「……何してんだよ。」
自分でも思っていたより声が低くなる。
と視線を合わせたあと今吉を睨みつける。
何近づいてんだよ、何顎に手あててんだよ、壁に追い込んでんじゃねぇ、うぜぇ。
嫉妬なのか独占欲なのか何なのか分からない感情を押し殺して平生を装って話す。
今吉「いや?なんもしてへんよ。やましいことなんか」
人間が倒置法で話す時は代々やましいことをしていた時か、考えていた時だ。それをわかってて話してんだろうなぁ…余計にむかつくぜ……。
「じゃあなんでに追い詰めてんだよ。」
1回で話が終わんねぇの嫌いなんだよ。早く離れろよ。
今吉「大事な話しとってん。」
その瞬間パッと手を離しいつもの笑顔で話す今吉。
今吉「ま、わしのことも考えとってや。ほな、ウィンターカップでな。」
手をヒラヒラと振りながら去っていく今吉。
ドアの前まで来るとすれ違いざまに小さい声で呟かれた。
『お前なんかに渡さへんで。 』
…心底うぜぇ。
俺らがいないこの時に、もう一度想いを伝えたんだろう。
多分こいつは全部わかっててやっている。だから尚更腹が立つ。
そうして気付かないふりをして目で追い訴えると、口元を緩ませて部屋から出ていく今吉。
それと同時にに駆け寄る。
「大丈夫か。」
どもりながら大丈夫と答えるこいつは恐怖でいっぱいの顔をしている。
小刻みに手の先まで震えていやがる。
「…震えてんじゃねぇか。」
その瞬間俺は何を思ったのか、コイツの手を引き胸元で抱きしめた。こんなふうにしが出来ないのは、自分に自信が無いから、どんなやり方でもこいつを手に入れたいと思っているからだろう。