第10章 練習試合
胸元にの顔を押し付ける。
嫌でも自分が緊張しているのが心臓の動きからはっきりわかる。
自分が基本人に興味が無く、好意を寄せられること自体を嫌うくせして、色恋に走って女1人を取り合いなんてするとは思っていなかった。しかも、女ひとりのために自分自身が必死になっているなんて実に馬鹿らしい。
中学の頃からの片想いをズルズルと引きずっている、なんて事は馬鹿らしいを通り越して女々しすぎる。
様子を伺うようにの顔を覗き込もうとすると、顔を隠し慌てる。俺は意地悪するように無理矢理にでも身を合わせると真っ赤になっていやがる。
こいつ…今どんな顔してんのかわかってんのか……?
恥じらいの中にもグルグルと何かを考えるの感情が顔の表情から見え隠れする。ほんとにわかりやすいなこいつは。
俺の両手の中にすっぽりとハマっているの顔を真っ直ぐに見つめていると、どんどんと赤くなっていく。
目と目が合うと身動きや視線の動きさえもままならなくなった。
きっとこいつは、『蜘蛛の糸に絡まった蝶』なんて考えているんだろうな。
捕まったのはお前だけじゃないと言いたいけどな。
確かに捕まえるように働きかけて態度をとってきたつもりだ。
だが、逆に捕えられたのは俺の方だ。
捕まえた獲物を食べる前に、その捕まった獲物を一目見た瞬間に、手元に残したくなってしまうほど。
食べずに、糸でさらにまくことも無く、手元にずっと置いておきたくなってしまうほど、クモの巣を張ったクモは獲物に堕ちて行った。
そんなことを考えながら、俺はに近づく。
鼻と鼻が微かに触れ合う位まで近づくと、少しわざとらしく問てくるコイツにわざとらしく返事を返した。
そうして、コイツに俺は口付けをする。
何度何度も角度を変えて、愛おしくなって堪らないくらい。
━━━━━俺は、お前が好きだ。