第10章 練習試合
花宮の背に回している手を強く握る。
中学の頃に忘れてしまった。いや、忘れようとしてた。
花宮への思いを、気持ちを。
逃げようとしてた。
受け入れられなかった時が怖くて。
でも、今なら素直になれる…きがする。
────好き。
たったこの2文字にどれだけの思いがあるだろうか。
こんなことを思ってるうちに涙はとっくに乾いていた。
もはや、自分の心臓が余計に早く打って行く。
花宮「…?」
なんの変化や様子が見られなかったからか、私の顔を伺ってくる。
「みっ、見ちゃダメっ!!」
慌てて俯き顔色を見えないようにする。
何でかなんて、そりゃもう、
自分でもわかるほど真っ赤な顔をしているのが嫌でも顔から発せられる熱で分かる。
花宮「…なんでだ?」
「…恥ずかしい。」
花宮「今更何を。」
すると、顔が温かいものに包まれ、ゆっくりと上の方向に向けられる。
頬から耳にかけて覆っているそれは、花宮の手だ。
「ッ~~!」
花宮「…。」
完全に目が合うと恥ずかしくて声も反論もできない。
しかもそれをただ真顔で見つめている花宮が、余計に自分を恥ずかしくさせる。
「…なんで何も言わないのよ…。」
花宮「いや?恥ずかしがってんなぁと思ってな。」
こいつ完全に私を見て面白がっていやがる。
恥ずかしすぎてヤケになって口調悪くなるからやめて欲しい…。
「っ……。人の顔みて遊ぶな。」
花宮「じゃあ目見ろ。」
目?
なんで目?
「嫌だよ、恥ずかしい……。」
花宮「なんとも思ってなけりゃ普通にできるだろ。」
なんとも思ってないことを知ってるくせに何を言ってるこいつは。
長く一緒に居るからわかってるんだぞ。
相手の好意に気づきやすいのも、全部。
「…。」
仕方なく上を向き花宮の顔を見る。
恥ずかしすぎて泣きそう。もしこの好意が受け入れられてもらえなかったらどうしようとか、色々考えて不安になる。さっきまでの出しきれてない涙が出そうだ。