第10章 練習試合
バンッ!!っと音を立て勢いよく開いたドアから出てきたのは
「花宮!」
息を軽く切らして物凄い顔で今吉を睨みつける花宮。
花宮「……何してんだよ。」
あまりにも聞いたことの無い低い声に体が一瞬ビクッとなった。
今吉「いや?なんもしてへんよ。変なことなんか」
花宮「じゃあなんでに追い詰めてんだよ。」
ちらっと視線を合わせてから再び今吉を見る。
今吉「大事な話しとってん。」
花宮にいつもの笑顔を見せると同時にから離れ、ぱっと手を離す今吉。
今吉「ま、ワシのことも考えとってや。ほな、ウィンターカップでな」
手を振りながらさって行く今吉の背中を見つめる。
花宮は今吉が去っていくまでドアのそばを離れずに見送る。
ドアが完全に閉まるのと同時の傍に近寄る。
花宮「大丈夫か。」
花宮がいることの安心感からか泣きそうになるが何とかこらえる。
「だ、大丈夫っ…。」
花宮「…震えてんじゃねぇか。」
花宮が頭をふわりと優しく撫でる。
泣くのを堪えきれなくなりポロポロと床に雫が落ちる。
「怖かった…。」
花宮「おまっ、泣いてんじゃねぇよ…。」
花宮がはぁ…っと深いため息をつくと、腕を強く引っ張られる。
「っ……!?」
反射的に目を瞑ってしまい、何が起こったのかわからなかった。
目を開けても目の前は真っ暗で、上からは花宮の息遣いが分かる。
横からも後ろからもがっちりとした何かに包まれていた。
今、花宮に抱きしめられてる…?
「は、なみや…?」
泣いていたからかとぎれとぎれとぎれじゃないと話せない。
花宮「……黙って泣いてろ。」
頭ごと花宮の胸元に押し付けられる。
涙は溢れるけど、花宮の鼓動が早く打つのを感じる。
こんな自分も、きっと花宮もドキドキしてるのに、泣けるわけがない。
「っ……。」