第10章 練習試合
練習試合当日。
朝の8時から体育館で練習を行っているのだが、いつにもなく殺伐とした空気が漂う。
山崎「荒れてんなぁ……花宮」
原「そりゃそうっしょ。いろんな意味で何が起こるかわかんねーもん」
汗を拭いながら、花宮を見る山崎と原。
緊張して変に力が入っているのかいつもより息が上がっている気がした。
「……なんか、緊張してきた」
変な汗が出過ぎて、サラシが蒸れる。
この姿を見て、向こうが気づくか気づかないかの不安もあるし、何よりも、
「円城寺に会いたくねぇ……」
思わず本音が漏れる。
花宮が言っていた。
今日の練習試合は勝つか負けるかが問題じゃない。あくまでも、向こうのプレーを認識するのと私を慣らすためのものだと。
なら、やってやろう。動けなかったら動けなかったでその時だ。
あくまでも、この姿の時は、男。
自分にそういいきかせ落ち着かせる。
大丈夫、バレても花宮達がいる、なだめる様に心の中で繰り返しつぶやく。
花宮「」
「何?」
花宮「大丈夫か」
不安が顔に出ていたのであろう。
花宮が少し顔色を伺いながら聞く。
「んー…ちょっと不安だけど、やるしかない。頑張る」
上手く笑えなくて顔がひきつって苦笑いになる。
すると花宮は不意と目を逸らし
花宮「そうだな…まぁ、お前ならできるだろ」
少し嘲るようにあの黒い笑みで言ってきた。
「むっ……かつくわぁ~」
花宮「ふは!せいぜいムカついて必死になる事だな。あとペナルティ、2セット追加行ってこい。」
「最悪だー!!」
さっさとボールを持って去っていく花宮。
原「どんま〜いwま、でも良かったんじゃん?」
「どこがだよ…」
原「だって、ホラ、緊張ある程度溶けたっしょ?」
「!!」
原にも緊張しているのがわかっていたのか、と思う驚きと花宮が緊張を溶かしてくれるように話しかけてくれたのかと思うとどこまで優しいんだとふと思ってしまう。
だからわざとなのか素なのか分からないが、あんなふうに…
いや、多分わざと五割素が五割だな。