第9章 不自然
帰り道。
薄暗くなった日が落ちかけ、街灯に照らし出されている道を無言で歩く。聞こえるのは2人の足音だけ。
さっきのロッカールームの出来事から、花宮は一言も喋らない。
胸の異様なドキドキは今でも続いている。
いや、さっきは鼓動が大きく早打っていたが今は比較的落ち着いて鼓動が波打っている。
思い出すとまた早打つ。
とにかく意識をせずにしないといけない状況だ。
「ッ〜……」
とにかく、意識しないようにすること自体が自分だけあのことに関して意識しているようでとても恥ずかしくなってくる。
花宮「……おい……」
突如口を開く花宮。
その声は酷く低くぽつりと呟き何かを思い知らせるように伝わる。
それには警戒心、が込められているようにも感じた。
「…?」
尚更訳が分からない。
顔色を伺うように花宮を見る。
花宮「っあれを見ろ……」
「っ……」
目線を逸らした先。
そこには、
「よぉ、久しぶりやな」
「っなんで俺まで…」
聞いたことのある関西弁と気だるげな声。
よく知っている。今までで短ろうと長かろうと深い関わりを持った仲のやつだったのだから。
「今吉と…、…青峰…?」
なんとも不思議なメンツの光景におもわず首をかしげてしまう。
花宮が向こうに目をそらすことなく、ゆっくりと口を開いた。
花宮「……何の用だ」
今吉「そんな邪険にせんでーな。仲良うしようや」
不敵な笑みを浮かべる今吉。青峰は先程のめんどくさそうな顔ではなく真面目な顔つきでを捉えていた。
「…話が読めないのですが」
青峰「…」
青峰と目を合わせ逸らせる。
何故青峰がここに……?
花宮「……キセキの世代がなんでここに来たのかは分かった。だが、なんの用もなしに来たわけじゃねーだろ?ですよね?センパイ」
今吉がくつくつと笑う。
今吉「せや、霧崎第一と練習試合してもらえるか」