第9章 不自然
結局みんな帰り、花宮と2人で戸締りをすることになった。
「はぁ……」
こんな時に2人とか、殺しにかかってきてるだろう。
多分あいつらはそれを狙ってるのもあるんだろうけど…。
花宮「ため息ついてる暇あんなら手動かせ。」
「びっ!?くりしたぁ……」
突如後ろに現れるの本当に辞めて欲しい……
いろんな意味で心臓がもたなくなる。
「……」
花宮「……」
謎の沈黙。
聞こえるのはロッカールームの一人一人の持ち物を確認して扉が閉じる音だけ。
……顔みて話せないし何を話せばいいかわからない。
「花宮。」
花宮「……んだよ」
「……今日も暑いね…」
しまった。
何だこのすごく需要のない会話。
流石に気まずく花宮の顔色をうかがう。
花宮「……そうだな」
あれ、いつもなら殴る蹴るの勢いで『無駄な口動かしてねーで手動かせ!!』
とかいうかと思ってたのに。
不意にぶつかりそうになり至近距離で止まる。
一向に動かないため顔色を伺うように名前を呼ぶ。
「……花宮?」
上をむくと真っ直ぐに見すえた目が自分を伺っていた
あ、やばいなこの顔。
身動きが取れなくなった蜘蛛の糸に絡まる蝶のように、その場に動けなくなるほどの色深い瞳に吸い込まれそうになる。
「ど…うした…?」
花「……っなんでもねぇ、さっさと帰るぞ」
さっさと歩きロッカールームから出ていく姿を目で追い慌てて追いかける。
心臓の音がうるさい。
きっと今、誰かと顔を合わせるのは無理だろう。
自分でもわかるくらい、正気じゃない顔なのだろうから。
あの数秒間見つめ会っていた花宮の顔が脳内でぐるぐると回る。
少しでも期待してしまった自分に、恥ずかしさを覚えた。