第16章 ネコとくま
「大野さん」
いきなり呼ばれてニノを見ると
「はい」って緑のネコを渡される。
「え?なに?」
戸惑う僕にスマホを向ける。
「ほら、笑って」
アイドルの性なのか?
そう言われれば、条件反射のように
微笑んでしまう。
スマホが鳴らすシャッター音。
「和、お前、なにしてるの?」
「『なに』って…。
こんな可愛いもの撮っておかない
馬鹿はいないでしょ?」
絶句した僕の手からネコを奪い、
次の瞬間、くまを持たせた。
「大野さん、もう一回笑って♡」
笑えるかっつうの!
「膨れっ面も可愛いからいいか」
そう言いながらもう一度
スマホのシャッター音を鳴らした。
「翔くん…なんとかしてよ…」
僕の声なんて無視して
ニノが翔くんに聞く。
「ってか、あんた、
なんでこんなもん頼んだの?」
「え?友だちのお子さん用?」
「なぜ疑問系」
「だって…今の智くんみたらさ…
あげるの勿体なくなったから」
「翔くん…」
情けない声が出てたと思う。
「おじさん、諦めな。
翔さん、そのぬいぐるみ、
自分の部屋に置くと思うよ」
「そうなの?」
ジト目に見る僕に
翔くんが困った顔をしてる。
なんで迷う必要があるのか
全く判らないよ。