第14章 Intoxicated
シートベルトもままならない様子の智くん。
運転席側からシートベルトをつけてやる。
そのまま車を出して
自分のマンションに向かった。
智くんは車に乗っても上機嫌で
カーオーディオから流れる曲に
合わせてこの人らしからぬ
音を外した鼻歌を歌ってる。
ほんと、どうしたんだろう?
家でならまだしも
外でこんなになるまで飲むなんて…
らしくない。
まぁこの状態で聞いても
答えは出ないか?
道路もそんなに込み合って
なかったのであっという間に
マンションについた。
地下の駐車場に車を停め、
智くんに声を掛ける。
「智くん、着いたよ。ほら降りて」
動く気配のない智くん。
仕方が無いから助手席にまわって
もう一度声をかけた。
「智くん?
いつまでそこで座ってるの?
ほら、部屋いこうよ」
酔ってるせいでいつもよりも
水分の多い瞳で俺を見ていう。
「やだー」
「『やだ』ってあなた。
こんなところにいても
しょうがないでしょ?」
あぁもう…酔っぱらいは厄介だ。
そんな気持ちが顔に出たのか、
拗ねたような顔をする智くん。
ぷくーっと膨れた顔をしてからにぱっと笑って
とんでもないことを言う。
「じゃぁーさー、だっこして♡」
「抱っこぉ?」
思わず大声を出してしまった俺に
智くんはうるうるの目でこちらを
見ながらもう一度甘えた声で
「だっこぉ」と言う。
あぁーもう仕方ない。
「わかったよ、智くん、おいで」
手を伸ばすと自分から腕の中に
飛び込んでくる。