第14章 Intoxicated
それをみながら斗真が続ける。
「おれが席外して戻ってきたら
なんか変な雰囲気になってて…
大野くんのピッチが上がってさ…
で、止めたんだけどこんな感じ」
「ってことはきっとその斗真が
外してた間になんか
あったんだろうね?」
「多分…」
一瞬黙った斗真が続けた。
「翔くんごめんね、
ほんとはさ潤を呼ぼうと思ったの。
大野くんに『潤に迎え頼むよ』って言ったら
『しょーちゃんがいい。
しょーちゃんじゃなきゃ
かえらない』って」
あぁ…斗真の困惑が手に取るように判る。
「こっちこそ、悪かったな。
智くんはおれが連れてくよ。
斗真、帰るだろ?
送っていくよ?」
「翔くんありがとう。
気持ちだけもらっとく。
もうすぐ迎えが来るから」
「そうなの?
遠慮ならしなくていいよ?」
「ううん、ホントに大丈夫。
それより大野くん、大丈夫?
こんなの珍しくない?」
「うん、珍しい。
まぁ大丈夫、あとはこっちで
なんとかするから。
ほんとありがとね?」
そう言って智くんを支えて
店を出ようとして気がついた。
「あっ会計は?」
「それがね、スタッフさんの分も
含めて既に大野くんが
支払済みだって」
ちょっと困った顔で斗真が言った。
「あぁ…変なところで
気が回るから、この人。
らしいっちゃらしいね…」
変なところでしっかりしている智くんに
思わず笑みがこぼれる。