第13章 月はピアノに誘われて
階下のピアノの置いてある部屋に
移動する。
その間も翔くんの腕はずっと腰にある。
隣にいる翔くんの体温が気持ちいい。
ピアノのある部屋は少し
空気がひんやりしてた。
「さて…なにを弾きますか?」
翔くんがシャツの袖を少し捲って
僕の方を見る。
「うーん、クラッシック、
曲名わからないからなぁ。
翔くんが好きなの弾いてよ」
「こけても笑わないでよ?」
「笑わないよ」
翔くんが奏でる音色。
力強さの中に優しさが垣間見える。
翔くんらしい音色。
すごく好きなんだ。
最初はクラッシックぽい曲だったのに
途中からポップスに変わる。
知ってる曲だったから…
思わず口ずさむ。
弾き終わった翔くん。
「相変わらずいい声だね?智くん。
やっぱ好きだなぁ、智くんの歌声」
「僕は翔ちゃんのピアノ、好きだよ?
包み込まれるみたいで…」
「包み込むのは音だけ?」
そう言って翔くんが
後ろから抱きしめる。