第13章 月はピアノに誘われて
「でも…そろそろ入ろう?
風邪引いちゃうよ?」
心配そうにいうキミ。
ほんと、心配性だ。
「うーん。なんかもったいない」
「夜風、まだ冷たいよ?」
翔くんの言うことも
もっともだけど…。
翔くんの顔を見ながら考える。
「じゃぁさ…
代わりに翔くんのピアノ、
聞きたいな」
「俺のピアノ?巧くないよ」
「聞きたいの…。ダメ?」
翔くんのことを見つめる。
知ってるもん、翔くん、
こうやってお願いすると
OKくれるの。
「ほんと、あなたは物好きだね?
いいよ。
俺の下手なピアノでよければ」
そういって翔くんは僕の腰に
手を廻し、ベランダから室内に誘う。
部屋のなかの暖かい空気に包まれて
始めて自分の身体が冷えてたのに
気がついた。