第11章 シンデレラエクスプレス
ゆっくりと浮上した意識に聞こえた
ノックの音。
マネージャーかな?
なんてぼーっとした頭で
部屋のドアを開けた。
視線の先にいたのは帽子を深く被って
メガネをかけた男の人。
見間違うわけない…撫でた肩。
「翔くん…?なんで?え?夢?」
突然のことの事情がまったく
飲み込めない僕。
そんな僕をみてにっこり笑いながら言う。
「とりあえず部屋に入れて。
このままじゃ迷惑になるから」
あぁ、そうだ。
こんなところ見られたらまずい。
翔くんが後ろ手でドアを閉めながら
入ってきた。
「翔くん…なんで?」
僕はさっきの疑問をもう一度
目の前のいとおしい人にぶつける。
「智くんが…呼んでる気がしたから」
って笑う。
「なんてね…嘘。
俺が会いたかったの。
なんだかよくわかんないけど
逢いたくて…。
最終の新幹線、乗ってきちゃった。」
「翔くん…」
「泣くなよ…離せなくなるじゃん」
「だって…僕も逢いたかった。
たった一日なのに…
こんなことよくあることなのに
なんだか解らないけど…
すごく…すごく逢いたかった」
翔くんに自分から抱きつく。
「俺のスエット着てたの?」
「うん…翔くんの匂いがするから…」
「スエットだけでいいの?」
「やだ、だって翔くんの方が
もっといい匂いがするから」
鼻腔をくすぐる僕が一番好きな香り。
この香り…僕を落ち着かせる。