第46章 バイカラーサファイアの夜 ーリクエストシリーズー
自分のマンションに車を停めてもらう。
「智くん、起きてるんでしょ?
それとも…抱っこして連れ帰る?」
運転手さんに聞こえないように耳元に唇を寄せる。
風磨のところで、俺が来たのわかってたのに寝たふりをしていた智くん。
あの場で聞いても良かったけど流石に後輩の前で色々聞くのは憚られてなんとかマンションまで耐えた。
「…歩くよ」
渋々といった声が聞こえた。
予めポケットに入れておいた一万円札を運転手に渡し車を降りる。
その間、繋いだ手は離さなかった。
離したら逃げる気がしたから。
車を降りた智くんは逃げはしなかったけど逆にその場を離れようとしない。
思わず、ため息が溢れる。
「…智くん、とりあえず中に入ろう?
もう時間も遅いし…」
俺の一言にじっと俺を見る智くん。
ぷいっと顔をそむけるが繋いだ手を引っ張ると渋々といった感じで付いては来る。
もう…何なんだよ…。
疲れもあってイライラが募るがとにかく部屋に戻った。
部屋でも一言も喋らない智くん。
そのまま普段使ってる俺のベッドじゃなく客室のベッドに転がり込んだ。
その態度に余計苛ついて…俺はベランダに出るとそのままタバコに火をつけた。
苛立ちを吸い込むように肺に煙を流し込んだ…。