第40章 サプライズバレンタイン
鏡の前にいるのは…紛れもない女の子だった。
ゆるーく毛先を巻いたダークブラウンのロングヘアはところどころにメッシュが入ってる。
身につけているのは明るめの紺色のワンピース。
思わずターンしたら裾が円を描くみたいに広がった。
丈は膝を隠す程度。
やるなら徹底的にと下着も女性もの…。
胸にはノンワイヤーのブラジャー。
これなら痛くないらしい。
カップが潰れないようにとパウダービーズの入ったお手玉みたいなのを入れてる。
パンツはボクサーパンツのままだけどその上からパンティーストッキング?っていうのを履いてる。
女の子って…大変なんだね。
完成した僕を見て拍手する2人。
「大野さん、パーフェクトに可愛いです!」
そういったスタイリストさんは僕の着ていた服を素早く纏めて小さなバッグに入れる。
ロング丈のコートとファーのマフラーを手にして着せ付けてくれる。
「やっば、マジ可愛い!
中身が大野じゃなければ押し倒すレベル!」
そんなことを言いながらタクシーを呼び、二人は僕を送り出してくれた。
タクシーの中では一言も喋らず、ずっと外を見てた。
家の近くの大通りを一本入ったところでタクシーを降りた。
可愛い格好をしてるけど足元は男のまま。
さすがにヒールで歩く自信はなかったから。
そのまま無人の家に入り僕の靴の横に華奢なローヒールのパンプスを揃えて置いた。