第38章 結婚したいもん!
ON AIRは智くんと見た。
最初は心配そうに小瀧のことを見てた智くん。
ソファーに座って俺に体重をかけながらテレビの青白い光に照らされる横顔にキスしたい気分になる。
「あっ…ハッシュドビーフ…。
美味しかった?」
俺を見る智くんの瞳。
「あぁ…うん」
そう言ってる間にもVTRは進む。
『結婚したいもん…』
「翔ちゃん…のんちゃんのほうがいいの?」
潤み出した瞳に俺は慌てて言葉を重ねる。
「違う!そんなわけ無いじゃん!」
「だって…!
なんであんなにすぐに分かったの?
ワインが入ってるなんて…」
「聞いて?智くん。
ちゃんと話すから…ね?」
小さく震える身体を抱きしめて華奢な背中を擦りながらゆっくりとあの日のことを話す。
「あのハッシュドビーフさ…
智くんが前に作ってくれたのと
本当によく似た味がしたの。
あの時教えてくれたでしょ?
『赤ワイン、余っちゃいそうだから
多めに入れちゃった』って。
それを思い出して思わず声が出たんだ…」
「じゃぁ…あの…『結婚…』て」
智くんが不安そうな顔をあげて俺をみた。