第36章 とりっくおあ…
「翔ちゃん、お土産、買いに行こう?
みんなにね、買って帰りたいから」
和に手を引っ張られて歩き出す。
日が沈み暗くなり始めるとポート内に灯りが点りだす。
「うわっ、待てよ!」
立ち止まって振り返る和は思いっきりイタズラな顔をしている。
絶対こいつ、ダッシュする…。
案の定、走り出そうとした和を止めた。
こんなのところで走って怪我でもしたらシャレにならない。
わかってるのか和も、腕に感じたテンションで動きを止めた。
「和?」
「ごめん」
てへぺろって言い出しそうな顔で謝ってくる。
全く…敵わないよ。
そのまま店に入ったはいいけど…。
あっちこっち歩きながらなかなか決めない和。
「なに迷ってるの?」
小声で和に聞く。
こんなところで時間をかけてそのせいでバレたらまずいから俺はついつい焦るけど、和は動じる事なくのんきに選んでる。
「だって…私の財布から出す訳ですから…
そりゃ、吟味するでしょ?」
まじか…。
「………わかった…。
俺が出すから……早く決めて」
背に腹は代えられない。
俺の一言を聞いた瞬間、目が光った和。
そっからは怒濤の勢いでいろんなものをカゴにいれそのまま会計に引っ張られを…何回か繰り返しようやく満足した和。
終わった時には和の両手はミッキーのビニール袋に占拠されていた。