第33章 80 inch
バスローブを手にした智くんが微笑みながら言う。
「今ならさ、
まだゆっくりお風呂に入れるから。
向こうじゃ難しいでしょ?」
「じゃ、一緒に入らない?」
「いいよ…って言いたいけど…
今日はダメ」
「なんで?」
「だってそしたら
ゆっくり入れないじゃん?
だから…帰ってきたら…
一緒に…ね?」
そういうとそのまま身を翻してしまう。
追いかけたいけど…智くんの気持ちを素直に受け取る事にした。
風呂から出ると、ダイニングに食事が用意されていた。
白米、みそ汁、焼き魚に卵焼き…そして漬け物。
まさに和食って感じのメニューだった。
「智くん、用意してくれたの?」
「うん…しばらく食べれないと
思ったからさ…。
急いで作ったから
口に合うといいけど…」
湯のみを出してくれながらはにかむように笑う。
智くんが作ってくれたものならたとえ黒こげでも美味しく食べれる自信はあるけどな?
用意してくれた食事はすごく優しい味がした。
食べ終わってリビングに行くと目の前の壁を埋め尽くす大きなテレビが目に入った。
「これ…買ったやつ?」
「うん、80インチ。
こんな高いの、
かなり勇気がいったけどね?」
「なんでこんな大きいの買ったの?
家でテレビ、
あんまり見ないでしょ?」
大きなテレビを買ったって聞いたときから不思議だったから聞いてみた。