第33章 80 inch
車の中でも俺と智くんは無言だった。
ただ2人、ずっと手を繋いでた。
明日の今頃は2人、別々の所にいる。
それがわかってるから…声は出さずに体温だけを伝える。
体温が心地よくてウトウトしてたら運転席のマネージャーから声がかかる。
「智くん、着いたって」
肩をかるく揺するとふわりと笑いながら瞼をあける。
濡れた瞳に吸い込まれそうになるから、誤魔化すように明日の話をマネージャーとする。
「おれ、自分で空港行くから、
迎えいらないって
うちのマネに言っといて?」
智くんの手を引きながら言うとそのまま、エントランスを目指す。
そんな俺に智くんがちょっと待ってって静止をかけて、車にスマホ忘れたって足早に戻った。
すぐに戻ってきた智くん。
そのまま、エレベーターで智くんの部屋に向かう。
鍵を開けて、ふたりで雪崩込むように部屋に入る。
性急に口づけを交わしながら寝室を目指す。
余裕なんて欠片もなかった。
少しでも長く智くんに触れていたくて、少しでも長く体温を伝えあいたくて…。
ベッドに乗った途端に互いの服を剥ぎ取るように脱がす。
「翔ちゃん…翔ちゃんっ!
欲しい…翔ちゃんが欲しい!」
「智…さとしっ!」
名前を呼びながら唇で綺麗な肌を味わう。