第33章 80 inch
「ほら、
マジでシャワー行っておいでよ?
こっちは引き受けとくから…。
マネージャーに言ってあるから
さっぱりしたらそのまま、
送ってもらって?」
ニノに背中を押されて、智くんと二人、シャワーブースに入る。
みんなと話してる間もずっと黙ったままの智くん。
なんか、怒らせるようなこと…したかな?
どうせなら笑顔で送ってほしいんだけどなぁ…。
そんなことを思いながらシャワーを浴びて、帰るだけだからとラフな格好で裏口に回る。
既に着替えた智くんが俺のカバンも持っててくれた。
「智くんごめん。
重いでしょ?それ」
取材用の資料やタブレット、ノートPCに通信用のルーター。
とんでもない大荷物になってるカバンを智くんは笑いながら持ってくれていた。
「平気だよ…。
でも大変だね、
こんなに勉強するんだね?」
さっきまで黙ってた人が普通に話してる…。
機嫌が悪いと思ったのは自分の気のせいだったのかな?
「選手の4年に比べたら…
大したことないよ…」
呟くように言う俺の背中に手を回し、マネージャーの車に促す。
「お待たせ。ぼくんち、お願い。
翔ちゃんもだから」
反論なんて許さないと言わんばかりにマネージャーに告げた智くん。
マネージャーは何も言わすに頷き、そっと移動用のミニバンを出した。
空には上弦の月が輝いていた。