第31章 This Night
一粒摘まんで和に向ける。
「ほら、口開けて。
食べなきゃ感想言えないだろ?」
「うん。
じゃ、いただきます」
そう言って素直に口を開けた和。
その口にココアパウダーを纏ったチョコを1つ放り込む。
「どお?」
「うまい!これ、まじで美味しい!」
「んじゃ、ほら、もう1つどうぞ」
和の口にもう1つ、チョコレートを放り込んだ。
口をもぐもぐさせて食べる姿がかわいらしい。
ごくりと飲み込むと和の指がチョコレートに伸びる。
「はい、潤くんも…お裾分け」
折角なので素直にもらう。
俺も最後の一つに手を伸ばし和の口に放り込んだ。
心地よい甘さに自然に表情が緩む。
互いに緩んだ表情が恥ずかしくて誤魔化すようにもうすぐ出来るからと和をキッチンから追い出した。
そのまま調理を続けてたんだけど…なんだかわからないけど身体が火照る気がする…。
コンロの傍にはいるけどいつもと変わらないし…。
おかしいと思い始めた時にスマホが着信を告げた。
火を消して画面をスワイプした。
『もしもし…潤くん?』
智さんから電話…。
そう言えばあとで連絡するって…。
「もしもし?智さん?どうしたの?
打ち上げ始まってるんじゃないの?」
時計を見ながら聞いてみる。
『ね?あのチョコ、和、食べた?』
俺の質問をスルーして智さんが聞いてくる。