第29章 大野智氏の(意味有りげな)微笑
リビングに戻ると翔くんがいた。
「智くん…温まった?」
小さく頷くとホッとした顔をする翔くん。
つい…絆されそうになる。
「あのさ…ごめん。
智くんの気持ちとか考えずに
一方的に責めて…」
「それは…僕も…だから。
ごめん…。
でも…ほんとなにもないから…」
「うん…それもわかってる。
でもさ…好きすぎて…
嫉妬しちゃうんだよ」
「それは僕も同じだよ?
ねぇ、翔くん、
さっき言ったこと覚えてる?」
「『なんでも言うことを聞く』
ってやつだよね?
もちろん、覚えてるよ?」
「じゃぁさ…今日は僕が…抱くよ?
翔くんのこと」
「え?智くん?」
「なに?別におかしくないよね?
僕のことを疑ったんだから…
お仕置きだよ?翔くん」
一瞬、身を翻そうとした翔くんの手を捕まえる。
「そっちじゃないよ?翔くん。
寝室はあっち。
それとも…ここがいい?
もしかして玄関とかの方がいいの?」
からかうように言うと悔しそうな顔で
首を振るの。
かわいいよね?
公園でさ、めっちゃ心配そうにしてるからわざとくしゃみのひとつもすればこうやって引っ掛かってくれる。
今、頭も体もドラマモードだから…。
こんな時期に僕を怒らせるのがいけないんだからね?翔くん。
躰に教えてあげる。
翔くんににっこり笑いかけると体がびくりと震えた。
うん、翔くんかわいいよ。