第29章 大野智氏の(意味有りげな)微笑
なのにさ…僕の気持ちをまーったくわかってない翔くんは…。
「ねぇ、なにあれ?
ふーちゃんとかさ…」
「あんなの、その場のノリじゃん?
翔くんだって
それぐらいわかるでしょ?
この業界に何年いるの?
次に会ったら『菊池くん』になるに
決まってんじゃん。
ってかそれぐらいわかれよ!」
「なにその言い方。
だいたいさ、
風磨とどこ行ってるとか
なんで聞くの?
しかもなにあれ?
まるで俺がおしゃれなところに
連れてってないみたいじゃん?」
「事実行ったことないじゃん!
編集でカットしてたけどさ、
なんだよ、
神楽坂の隠れ家レストランって?
そんなとこ、
連れてってくれたことないじゃん!」
「なに言ってんの?
だいたい、おしゃれなところは
肩が凝るからヤダって言ってるの
智くんじゃん?
あいつがどこの店のことを
言ってたのかわからないけど
多分、一度は誘ってるよ?おれ」
「どこの店って…
そんなに連れてってるの?」
「そりゃ、相談されれば行くし…
なんだよ、その顔。
だいたい、後輩に
『連れてってくれ』ってさ…
なに強請ってるの?
そんなに風磨と
食事に行きたかったの?」
「はぁ?翔ちゃん何言ってるの?」
もう互いにヒートアップしすぎて訳が分かんなくなってきたよ。