第26章 ICE
「ただいま!」
いつもならすぐに返事が返ってくるのに…。
玄関にある靴を見て不安になる。
急いで階段を駆け上がって潤くんの部屋の扉をあけた。
ベッドの上に布団を被った小さな山がある。
とにかくそこにいるて思ったらホッとした。
その山を見てみると小さく上下している。
しかも荒い息遣いも聞こえる。
「潤くん?どうしたの?熱でもあるの?布団から顔出してよ」
ゆっくり声を掛けると布団の山から真っ赤な顔の潤くんが出てきた。
「潤くん?顔真っ赤だよ、風邪引いた?」
額に自分の額を当てて見る。
一瞬、潤くんの身体が跳ねた。
「熱はそんなに高くないみたいだね」
「ん、大丈夫…」
泣きそうな顔で足をもぞもぞさせながら言う。
はい、アウト!
智の言った通りになったわけね。
「でもさ、すごい辛そうよ?今日って打ち合わせ?朝は平気だったよね?」
「うん、打ち合わせしてる最中に飲んだコーヒーが変な味で気分が悪くなって帰ってきた」
「今はまだ気持ち悪い?」
「ううん、でも…」
「とにかく一旦着替えて必要なもの取ってくるから待ってて?」
そう言って俺のシャツを摑み潤んだ眼で見る潤くんを置いて部屋を出た。
少しは潤くんに反省してもらわないとね?
「潤くんお待たせ」
再び布団に潜り込んだ潤くんに話しかけた。