第22章 流水の紋様 ~揺蕩う(たゆたう)~
「ほら、普段、なかなか国内なんて
旅行出来ないしさ、
たまにはのんびりね?」
「そうだよね?
翔くんいっぱい旅行してるように
見えるけど…
全部日帰りだもんね?」
僕のわざとらしい言葉に
更に乗っかる翔くん。
「大野さんだって毎回、日帰りでしょ?
沖縄とかもそうだったよね?」
一応スタッフさんの手前、
僕のことを大野さんと呼ぶ翔くん。
解ってるけどちょっと寂しい。
「そうだよ…せっかく沖縄行ったのに、
釣りも出来ずに潜って、貝、捕って
東京にとんぼ返りだよ?酷くない?」
大野さん呼びとあの沖縄の海を思い出して
半ばふて腐れて気味でいうと
スタッフさんが気の毒そうな顔で
僕らをみる。
『それは…かなり辛いですね?』
「でしょ?
だから今日は
ゆっくりさせてもらうと思って。
皆さんには申し訳ないけど…」
「いえいえ、ゆっくりしてください。
あっ着物はどうされますか?」
スタッフさんが気を利かせて
尋ねてくる。
「大丈夫、俺のも大野さんのも
自前だから。
ワクワクの時に気に入って
揃えたんだよね」
「ちゃんと畳み方も習ったし、
着付けも出来るようになったの。
ねー?翔くん?」
「『ねー翔くん』って、あなた…。
まぁ、そうなんですけどね?」
なんて言ってるけど…
翔くんは脱がすの専門…なんだよね…。
何度やっても覚えられないの、
そう言うところはほんと無器用だよな。