第22章 流水の紋様 ~揺蕩う(たゆたう)~
『カットーーー!!』
大声と共にそれまでの空気が一気に崩れる。
『大野さん、櫻井さん、お疲れさまでした』
監督の声と共に一気に騒々しくなる周囲。
「智くんお疲れ」
翔くんがいつもの笑顔で
僕に手を差しのべる。
乱れた着物の裾を慌てて直して
翔くんの手を握って立ち上がった。
「ねえ、これ、ほんとにオンエアするの?」
思わず漏れた僕の本音に翔くんも同意する。
「これ、事務所のオーケー出てんの?
俺ら一応、ジャニーズなんだけど…」
正月特番のワンコーナーとして
視聴者からの応募の脚本で
ミニドラマを放送するという。
テーマはアルバムに合わせて
「Japonism」らしい。
メンバー同士それぞれ組んで
5分程度のものらしいけど。
「これ、やばくない?」
着物姿の翔くんが頻りに言っている。
まぁ、さすがにこれは…ねぇ?
『あの、櫻井さん、大野さん、
これで撮了ですがこの後
どうされますか?』
顔馴染みのスタッフさんが聞いてくる。
翔くんがアイドルスマイルを浮かべて
砕けた口調で答える。
「ここ、撮影で貸し切りにしたでしょ?
だからワガママ言って
このまま1泊させてもらうことにしたの」
今回、撮影用に茶室を持つ小さな旅館を
貸し切りにしたのを知った
翔くんが根回ししたんだ。