第22章 流水の紋様 ~揺蕩う(たゆたう)~
先生はどう思われたのか…。
「けっこうなお点前で」
言葉とは裏腹に感情の籠らぬ声。
戻された茶碗を清め、仕舞いの準備をする。
動揺する気持ちを悟られないようにしながら
最後の所作を終え、
先生に向かってお辞儀する。
そして襖を閉め、水屋に下がった。
先生の目が声が怖かった。
震え始める自分を抱き締める。
知らぬうちに詰めてた息をふっと吐き出す。
そうしたらまるで
タイミングを図ったように…。
「智!」
水屋まで聞こえる先生の凛とした声。
「はい、翔先生、ただ今」
鞭にうたれたようにピンっと背を伸ばし、
襖に手をかけ、先生のいらっしゃる
茶室に足を踏み入れる。
先生の手が指し示す場所で正座して
先生の言葉を待つ。
「智…何を思って茶を点てた?」
「翔先生…?」
先生の仰る言葉の意味が解らず
ただ名前を呼ぶ僕。
「先ほどの茶…、邪な気持ちがあった」
「あっ…先生…」
「もう一度聞く。
…何を考えて茶を点てた」
「あ…許してください…」
ずいっと僕の方に詰め寄る先生。
思わず後ずさって乱れた着物の裾に、
先生の手が伸びた。
腿を撫でると、そのまま奥に手が進んだ。
「あっ…先生っ…だめですっ…」
「なんだ…これは…」