• テキストサイズ

Side by Side  【気象系BL小説】

第22章 流水の紋様 ~揺蕩う(たゆたう)~


陽の光が障子越しに柔らかく射し込む。

円を描くように造られた窓。

障子を半分開き、外の景色を
一幅の絵画のように見せる。

床の間に軸の代わりに扇子を飾る。

茶花はさんざん迷って
自分の好きな色の花、竜胆にした。

まもなく、今日のお客様がおみえになる。

僕にとってもっとも大事なお客様…。

先生が今日の正客。
二人きりの茶事。

緊張しないわけがない。
少しも失敗したくない。

時間になり、襖を開けて礼をする。

顔をあげると
先生が真剣な顔で座ってらした。

真剣な眼差しに射竦められ息が止まる。

次の瞬間、小さく笑顔をくださる先生に
心が軽くなる。

水屋に戻り小さく息を吐く。

水差し、建水、柄杓…。

所作通りに運び入れ、
最後にお茶碗と棗をもって
先生の見える位置に座る。

再度、礼をして気持ちを引き締める。

部屋には湯の沸く音と
外から聞こえる鹿威しの音そして
時々混じる小鳥のさえずりだけがある。

緊張のあまり、手が震える。

茶筅を茶碗に入れ、心を込めて茶を点てる。

静まりきった茶室。

一声も発さず気持ちの全てを
一服の茶に託す。

先生に向かい茶碗を出す。

先生の腕が畳に置かれた茶碗を取り、
美しい仕草で茶碗を傾ける。

先生の喉仏が動くのをじっと見つめてた。
/ 422ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp