第18章 上海夜曲 〜ネコとくま〜
全部赤にした。
僕の気持ちが届くように…。
「これ、紫、ないんだね?
潤くん、拗ねないといいんだけど…」
「でも、赤に青を重ねれば
紫になりますよ?」
チーフが言う。
「そうだね、確かにそうだ」
日本にいる皆の顔を思い浮かべながら
僕は笑った。
途中食事を挟んで、
ペンキが乾いたのを確認して
さらにつけたした。
大好きなみんなを思い浮かべながら
赤い文字の上に
黄色・青・緑・紫・赤のペンキを飛ばした。
出来上がりをみてなんか
やり遂げた気分になった。
僕が関わるところは全て終わった。
あとは上海のスタッフに任せられる。
達成感見たいものを感じながら
ホテルに戻った。
ベッドサイドの時計を見る。
23:00
いつもならテレビを見ている時間。
でもここでテレビをつけても君の姿はない。
時間と距離の差がもどかしく感じる瞬間。
いつもみたいに、画面を通して
おくってくれるメッセージに
応えることが出来ない夜。
寂しくないといれば嘘になる。