第18章 上海夜曲 〜ネコとくま〜
翌朝、朝食を取ったあと、
チーフと一緒に会場に行く。
これから本格的な設営が始まる。
展示品を並べながら、
絵の位置や高さなど…
細かく指示を出す。
東京で展示するものと比べると
小ぶりな作品が多いが
その分、点数が多いから、
必然的に時間も掛かる。
「大野くん、今日はこの会場、
かなり遅い時間まで開けてもらえるように
手配済だから納得いくまで
突き詰めて大丈夫だからね?」
「ありがとう。
ねぇあそこの壁さ、あれ、
なんか書いてもいい?」
会場の一角にある白い壁を指差す。
飾るつもりだったものを
バランスの関係で別の所に移したから
空いてしまった空間。
「構わないよ。
会場に建て込んだ壁は好きにしていい
契約になってるから。
終了後はバラして日本に
搬送することになってるから
流出の心配もないよ」
「さすが…」
僕の一言に嬉しそうな顔のチーフ。
昔から僕が言わなくても
僕の意図を察してくれる。
翔くんたちとは違うけど
頼りになる人だと思ってる。