• テキストサイズ

絶対絶望壮年 ーカムクラといっしょー

第2章 監禁最後の日


よし、当たった。
と、手応えを感じた次の瞬間に私は青ざめることになる。
「………!」
呆気なく竹の割れる音が聞こえた。
目の先の愛用の竹刀は酷い有り様になっている。
叩かれた拍子に仰け反っていたモノクマは顔を上げ、不思議そうに首を傾げた。
「(しまった……!)」
予想以上に硬かったようだ。
とにかく勝ち目がないことは分かった。
「……オマエ、オシオキだよ!」
モノクマが両腕を振り上げ、赤い眼をピカッと光らせて言う。
これはもう、逃げるしかないな……。
迷うことなく背を向けて走り出した。
走りながら、折れた竹刀を整え竹刀袋に何とかして収めた。
長い廊下を走る。
すると曲がり角から別のモノクマが現れた。しかも3体も。
挟み撃ちにされるな、と思い足を止める。
窓もない。何処かの部屋に繋がる扉もない。
逃げられそうになかった。
「うへへへへへ!!」
笑い声を垂れ流しながらモノクマがどんどん迫ってくる。
どうするべきだ?
一か八かで後ろのモノクマの横をすり抜けようか?
いや、無理だ。この廊下は狭すぎる。
前方にモノクマ、後方もモノクマ。
前門の虎、後門の龍とは云うがいっそのこと虎と龍の方がマシかもしれなかった。
「(……冗談を考えてる場合じゃないな)」
そう気を取り直すが解決策などない。
両側から迫るモノクマはすぐ目の前だ。
死にたくない、と思いながらも目は固く閉じる。
このままでは確実に殺害される。
どうしようもない現実に抗えなかった。
目を閉じて何も考えないようにした。
考えないようにしたのに、走馬灯の如く1人の少女が頭に浮かぶ。
娘だ。私の唯一の家族。
会えないまま死ぬのか。
最後に会いたかった。
もうすぐ殺されるという状況で早くも精神的に限界を迎えたのか、やけに体がぐらぐらと揺れる。強い目眩か?
無意識に目を開けてしまう。
視界の端にモノクマの爪が見えた。
悪いタイミングで開けてしまったなと思った瞬間、足下が崩落した。
「え……!?」
思わず声が上がる。
4体のモノクマと一緒に落ちていく。
此処は何階だったか、と考えたときには灰色がかった黒い地面に白線が引かれている景色を視認していた。
「……!!」
アスファルトだ。
受け身を取りながら着地する。
とは言っても、ほぼ地面に投げ出された状態に近い。
/ 28ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp