第5章 地下鉄にて
今隠れている瓦礫では耐えきれない。寧ろ破壊され崩れた瓦礫に埋もれて死んでしまう。
そう悟り暁は辛うじて瓦礫の陰から飛び出す。
思った通り、背後で派手に壊れる音がした。
もう少し遅れていたら無事では済まなかっただろう。
コドモの前に飛び出してしまった暁は次にどうするべきか迷っていると、自分とは反対側に位置する車両の陰からカムクラも出てきた。
「無事だったのか、青年……!」
暁はカムクラを見た途端、安堵の溜め息を吐いた。
「……安心するのはまだ早いですよ」
カムクラが視線を上に上げて指差す。
「や……やっぱりまだ生きてたんだな! しかもそっちのおじさんの方は殺すリストの魔物じゃないかぁ!!」
ロボットの肩でコドモが声を張り上げる。
「……また"殺すリスト"か。殺すリストって何なんだ?」
後退りながらも興味本位に暁が訊いた。
「そっかぁ……おじさんはまだ腕輪つけてないし、ゲームのことも聞いてないんだね」
「そ……そうだ。狙われる理由を教えてもらわない訳にはいかない。私に教えてくれ」
思ったよりも普通に返してくれたコドモに暁は少しだけ安心した。
「…………」
カムクラが「コドモと話をする状況ではない」と批判を込めた目を暁に向ける。
「おじさんの娘さんって、希望ヶ峰学園に閉じ込められてコロシアイさせられてたんだよ。だからおじさんは娘さんの人質として、マンションに閉じ込められてたの」
「殺し合いだと……?」
「その話は長くなるから置いといて……まぁ、コロシアイでは結局人質は使われずに終わったんだよね。だから今度はその人質を僕ちんたちが利用するってわけ」
得意気に少年は説明を続ける。
「僕ちんたち"希望の戦士"がおじさんたちみたいな"魔物"を狩るゲーム……その名も「デモンズハンティング"」!! おじさんの方は腕輪を着けに拠点まで連れて行かなきゃだけど、そっちの髪の長いお兄さんには今ここで死んでもらおうかな」
少年が首から提げたコントローラーのレバーを動かす。
「……あ、でも、先に僕ちんがおじさんを倒して高得点ゲットするのもアリかなぁ。ねぇ、これって抜け駆けに入る?」
疑問口調で語りかけはするが、ロボットからは遠慮なしに爆弾が飛び出した。
「(私たち2人ともを今すぐ仕留める気だ……!)」
暁とカムクラが同時に避ける。
また辺りに砂埃が舞った。