第5章 地下鉄にて
1kmくらい歩いたな、と思って何となく来た道を振り返って見た。
ここら辺はモノクマの数も減ってきていて、かなり落ち着いて進むことが出来ている。
「………」
カムクラがぴたりと足を止め、暗闇の先を見つめた。
眉間に微かにシワを寄せ、不快そうな表情を作っている。
「どうしたんだ……って、うわぁっ!」
カムクラの様子を訝しんで訊いた暁。
けれど返答もなく突然カムクラに掴まれ、瞬時に投げ飛ばされた。
「……おい青年、いきなり何をするんだ!」
目を白黒させながら暁が混乱と共に叫ぶ。
その時、目の前で爆発が起きた。
あまりに唐突で滅裂な出来事により、暁はカムクラから投げ飛ばされた訳を理解する。
――私を守る為だったのか……!
暁は起き上がり、砂埃の舞い上がる景色のなかカムクラを目に捉えようと見回す。
「暁従者、伏せなさい」
何処からかカムクラの声が耳に届く。
咄嗟に声に従い、暁はその場で屈んだ。
「(さっきから何が起こってるんだ……!?)」
しゃがみこんだ瞬間、暁の頭の上を何かが風を切って通り過ぎた。
その瞬間、また爆発。
爆風で体位を崩し、暁はコンクリートの上に尻餅をつく。
「…………!!」
危なかった、と暁は肝を冷やして爆発した壁を見る。
「……あっれぇ~? 今ので死んじゃったのかなぁ。新しいオブジェの材料にしたいからグチャグチャになってないといいな」
ふいにコドモの声が反響した。
暁は声のした方を振り返る。砂埃のせいでよく見えないが、そこにはおおよそコドモとは思えないような巨大な影が写っていた。
「あれは……?」
少しずつ砂埃の景色が晴れ、明瞭になっていく。
重機の音を立てながら動く巨体も次第に正体が明らかになった。
「どこだろうな~。僕ちんの殺した死体はぁー」
またコドモの声。
暁は目を見開く。
「(何故、コドモがあんなモノを……?!)」
暁は慌てて瓦礫の陰に身を隠す。
暁が見た影はコドモのものではなく、そのコドモが操るロボットだった。
操縦者のコドモはというと、身の丈の3倍も4倍もあるロボットの肩にちょこんと腰を据えている。
「おかしいなー。どこにもいない……ってことはまだしぶとく生きてるのー!?」
次の瞬間、ロボットの体から爆弾が発射された。
1発。2発。3発。
そのうちの1つは暁の近くに向かってきた。