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絶対絶望壮年 ーカムクラといっしょー

第4章 名前


暁は近くで呆れたような口調で言うカムクラの声を聞いた。
恐る恐る構えを解く。
足下で先程のモノクマが無惨にバラされていた。
「き……君が倒したのか?」
「そうですが」
「凄いな、モノクマを一瞬で壊してしまうとは恐れ入った」
暁がカムクラに感心して言う。
一方カムクラは褒められたことさえ鬱陶しそうにした。
「そんなことはどうだって良いんです。さっさと行きましょう」
その場から踵を返し歩き出すカムクラに、暁も大事そうにファイルを仕舞い込みながら付いていく。
「……その背負っている物は竹刀ですよね。使えるのならそれで自分の身を守ってくださいよ。常に先程のように上手くいくとは限らないんですから」
カムクラが暁の背中の布袋を指差した。
「青年よ、確かにこの中には愛用していた竹刀が入っているが、実はもう既に壊れてしまっている。残念ながら使用することは出来ない」
暁は肩を落として言った。
「初めてモノクマに襲われたとき竹刀で攻撃したんだが、思いの外硬くてな。簡単に割れてしまった」
「そうですか……では何か代わりの武器を持ってください。鉄パイプでもバールでもいいんで」
「武器か……。それならさっき路上に金属バットが落ちていた。それを使うことにしよう」
暁は道を振り返り、そのまま走って行く。
50mくらい離れた瓦礫の山から金属バットを引きずり出してまた戻ってきた。
「この形状なら振りやすい。私も一応剣道の師範だ、なるべく君の手を煩わせないようにしないとな」
金属バットを一振りしてみせると、何処か自慢げに竹刀袋を指差して言った。
「ちなみにこれは私の娘が父の日に贈ってくれた品だ。なかなか良いだろう?」
するとカムクラは竹刀袋をしげしげと眺めて、
「………僕には分からない趣です」
とだけ告げた。





「橋を渡って行くんじゃないのか?」
本土と塔和シティを繋ぐ橋とは全く違う方向へ進むカムクラに暁が訊く。
「はい。あなたと遇う少し前に橋の方から爆発音と崩落する音がしましたから、今頃は渡れる状態ではなくなっているでしょう」
「例のコドモ達がやったのか? それにしてもやることの規模が大きいな……」
橋の方を振り返ってみながら暁が呟く。
「そんなことを気にしても仕方のない事です。あなたはただ塔和シティからの脱出だけを考えて進めばいいんですよ」
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