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絶対絶望壮年 ーカムクラといっしょー

第4章 名前


所々崩壊した道路を2人の男が歩く。
スーツ姿のカムクラの数歩分後を、胴着姿の暁がついていく。袴なので歩きにくそうだ。
「……そう言えば、今思い出したことなんだが」
暁がふとしたように言った。
「君、もしかしたら私の娘の事を知っているんじゃないか?」
「……何故そう思うんですか」
「娘が希望ヶ峰学園に入学してから1年くらいした頃に、新しい友達が出来たという内容の手紙が私の元に送られてきたんだ。娘が描いたその友人の似顔絵が君によく似ていた」
暁がカムクラの顔を覗き込もうとした。
けれど、その動作に合わせカムクラもそっぽを向く。
「……人違いですよ」
「そうか、それは失礼した。あと、今更なんだが私はまだ君に名前を教えてもらっていない。助けてもらった恩がある……この街を出たら何かお礼をさせてくれ。その為にも、名前を知らない訳にはいかないからな」
「見返りなど求めていません。それに、名前はあなたとの間には必要ないと判断しました」
暁はカムクラの言うことに首を傾げた。
「それはつまり、教えたくないという意味か」
「そうなります」
「なら仕方ないな。その代わり君のことは「青年」と呼ばせてもらおう」
「よろしくな、青年」と言う暁を横目にカムクラは手に持つファイルを放り捨てた。
「あっ! 何をするんだ」
「何って……もう要らないでしょう」
「君は要らなくても私は要るぞ、なんたってあのファイルには私の娘の事が載っているんだしな!」
少し遠くに放られたファイルを取りに暁が走る。
「まったく……久し振りに愛娘の姿を見られた親心というものを理解してほしいのだが」
暁は砂ぼこりの付いたファイルを拾い上げ、汚れを簡単に払う。
その時、暁の頭上から小さな石がパラパラと落ちてきた。
「………?」
不審に思い見上げると、そこには白黒の物体がこちらを見つめていた。
暁はそれを見て、思わず後ずさる。
「も……モノクマか………!」
白黒の物体――モノクマが赤い目を不気味に光らせながら眼下のオトナを見下ろした。
怯んだ様子の暁に向かい、鋭い爪と牙を剥きながらモノクマは飛び下りる。
「(殺される……!)」
逃げるという事すら頭に浮かばず、暁は咄嗟に腕で頭を庇った。
痛みや死を覚悟して身構えていると、すぐ目の前で何かが壊れる音がした。
「………いつまでそうしているつもりですか、さっさと行きますよ」
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