第5章 あなたに堕ちていく
誰かに相談をしてからのが良かったのかも知れない。
でも、少しでも早くあの場所に行きたい私は黙って城を抜けだして森に向かっていた。
早く光秀に会いたい
会って無事な姿を見たい
焦る気持ちが私の身体を突き動かす
お願い無事でいて__
走り続けて息も上がり、足だってまともに動かない
それでも私は小屋が見えるまで足を止める事はしなかった。
光秀は必ずそこにいる
理由なんて無い
確証も無いけど、私にはわかる
「あった……」
視界に捉えた小屋
周りには誰もいない
「光秀!!」
勢いよく扉を開けると
「?」
目を見開いた光秀の顔を見た瞬間、ホッとして涙が溢れだしてしまった
「どうした?」
「どうしたって……光秀が拉致されたって聞いたから」
「拉致?」
「……違うの?」
「仲良くコイツと話をしていただけだ
おかげで御館様を狙う元凶が分かった」
ニヤリと笑い、光秀の傍で倒れている男を軽く足で蹴飛ばした。
それって……
もしかしたら?
「わざと捕まったっていう事?」
「そうとも言うな」
口の端を上げて笑みを作る光秀だけど、視線は鋭く倒れている男を睨み付けている。
光秀らしいといえば光秀らしいんだけど……
何だか緊張していたものが解かれて力なく座り込でしまった。
「大丈夫か?」
優しく私の肩に手をおく手首からは縛られていた跡が見えた。
「うん……」
「さて、城に戻るか……」
「光秀っ……私……」
「……城に戻ったら話がある」
初めて見る光秀の真剣な表情に想いを伝えようとした私は、言葉を飲み込んでしまった。