第3章 奈落の底に堕ちていく
「では、先に行っていろ。
俺は酒を用意してくる」
「お酒の用意なら私が……」
「お前は先に東屋に行ってろ」
薄く笑い、私の頬を軽く撫であげる。
これは合図
光秀に逆らってはいけない。
「わかった。先に行って待ってるね」
「ああ……先にな……」
含み笑いをする光秀の意図に気付かない私は、1人で部屋を出て蝋燭の灯りを頼りに
東屋へと向かう。
何故、この時
気付かなかったんだろう?
光秀の意図に気付いていれば、私は部屋から出る事などなく
辛い現実を見る事はなかったのに……
それとも女の私が現実を知らしめたかったの?
拙い恋心を諦めさせるために……