第1章 第1幕 第3王女ティアナ姫
「ススキは家どこなの?ピレッチ出身でしょ?」
「町で過ごしてた時の家は旅に出る際に売り払った」
「ご両親は?」
「俺がまだ小さい時に事故で亡くなってる」
「そう…ごめんなさい、なんか…」
「気にすんな、姫さん」
近くにあった簪風の髪留めでしっかり固定して流した髪を櫛でとかす。
「出来たぞ、姫さん」
「わあ…見事ね!ススキ」
出来上がった髪を見て嬉しそうにしてくれるのがちょっと嬉しかったりする。
「あーそうだわ、ススキも着替えて」
「え?レベッカ様に会うだけだろ?俺は…」
「それが姉さんだけじゃなくて嫁いだ先の国の王子…まあ、姉さんの夫もくるからなのよ」
「なるほど」
「んで、ススキはこれね」
取り出してきたのはいつも着ている真っ黒い服とは正反対の白や水色を中心とした服だった。
「…これ、着るのか」
「ソフィアがこれだって」
「(悪意があるようにしか見えない…)」
まあ、仕方がないのでそれを持って別室へ。着替えは普段から早い方で特にややこしい着方のやつでもなかったのですぐ着替えられた。
「お待たせ」
「はやっ!…うん、やっぱり似合わない…」
「姫さんまでそれ言わなくていいから」
「着替えたし行くわよー」
「おう」
姫さんの部屋を出て廊下を歩き、中庭を抜けて正面玄関に辿り着く。そこで仕事中のソフィアに出くわした。
《ティアナside》
「姫様、おはようございます」
「おはよう、忙しそうね、ソフィア」
「えぇ、そろそろレベッカ様がご到着するそうですので姫様も大広間へ」
「分かってるわ」
では、とソフィアは早足で私達の元から去って行った。大広間は正面玄関のすぐ目の前の扉だ。扉を開けると大きな室内に人はわずか3人のみ。父様、母様、キース兄さん…そして私とススキがそこに加わった。
「おはよう、ティアナ」
「おはよう、キース兄さん」
先に挨拶をしてきたのはキース兄さん。私と同じ髪色の髪を緩く後ろで束ねており、白い衣装に赤いマントが何とも王子らしい。
「父様、母様、おはようございます」
「…」
「おはよう、ティアナ」
父様は相変わらずの無表情、母様は優しい笑顔で答えてくれた。
「ティアナ、自分で髪結えたのか?」
「ううん、ススキが結ってくれたのよ」
「見事だなーススキ」
「恐縮です」